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2000年10月18日(水曜日)日本経済新聞16面
ネットベンチャーの実像
公開の夢と現実
不足する経営者 大企業の人材に注目
インターネットを使った商品情報検索サービスで米最大手のディールタイム・ドットコム(ニューヨーク)は日本での事業を日本コカ・コーラの元副社長に託した。日本法人のディールタイムドットコム(東京・世田谷)は山田哲社長の下で10月下旬にサービスを開始し、月間40万人の利用を目指す。
「実務能力に弱点」
山田氏は39歳。東京銀行出身で1996年に日本コカ・コーラに転じ今年4月までマーケティング担当の副社長を務めていた。米本社のナフム・シャルフマン会長は「マーケティングの実務経験が豊富な山田氏を迎えることができ非常に幸運だった」と喜びを表した。
ネットベンチャーの経営幹部候補として、改めて大企業出身の人材が注目されている。新興企業向け新市場に相次ぎ株式公開したネット企業の経営が必ずしも順調でなかったり、株価が低迷している原因は、事業モデルの問題とともに経営者の未熟さにあるとの見方が広がっているからだ。
ネットベンチャーの経営者は20代が多い。新しいビジネスを興すにはざん新なアイデアを生む柔軟な発想が欠かせない。
一方で往々にして実務経験には欠ける。ベンチャー企業向け経営コンサルティング、ジェイ・シー・アイ(東京・中央)の浜口直太社長は「若手経営者は資金や販売計画の作成、提携先との交渉など実務能力が弱点」と指摘する。始めた事業が一気に成長段階を駆け上がれば良いが、途中で難問にぶつかると経営が行き詰まる恐れがある。
横河電機の子会社でネット利用者を対象に出張サポートを手掛ける横河マルチメディア(東京都武蔵野市)の金川裕一社長も「人材は親会社の実務経験者が頼り」という。
「即戦力」は限られる
ただ大企業の中にベンチャー経営の「即戦力」になる人材が数多くいるかというと、必ずしもそうではない。
無料のネット接続サービス大手、ライブドア(東京・渋谷)の前刀禎明会長は他のベンチャーから少なくとも月1回は引き抜きの誘いを受ける。ウォルト・ディズニー・ジャパンやAOLジャパンでネット事業を立ち上げた経歴が知られているからだが、本当に必要な人材の不足ぶりを物語ってもいる。「日本の大企業に一から事業を立ち上げた経験を持つ人材はわずか」と前刀氏はいう。
ベンチャー支援組織のIAIジャパン(東京・港、八幡恵介会長)は大企業を退職した人などをベンチャーに紹介する事業を近く始める。紹介する人物には、大企業とベンチャーの違いを理解してもらうプログラムの受講を義務付ける。「ベンチャーは資金も販路も乏しい。大企業の流儀を通すと仕事にならない」(八幡代表)と判断した。
大企業で実務経験を積みつつベンチャー経営のリスクに挑む気構えを持つ人材は大企業内に潜んでいるのかもしれない。
ベンチャーキャピタルや社会人向け教育を手掛けるグロービスグループ(東京・千代田)でMBA(経営学修士)講座を受講する生徒は年間5,000人にのぼる。受講生の中心は有名大学を卒業した30代前半の会社員で、大手商社や銀行、メーカーに勤めている。
(事務局注釈)
この記事にはIAIジャパンがあたかも人材斡旋事業を開始するような書き方になっていますが、それは間違いです。IAIジャパンは人材紹介ができるようにスキルのデータベースを構築中ですが、それを業とするわけでも紹介料をどんな形でも戴きませんので事業ではありません。紹介された人と紹介先の企業との間で責任をもって決定してもらう仕組みを提供します。
転職や独立をめざす
このうち会社から派遣されているのは3割に過ぎず、7割は自分で費用を払い自発的に通っている。講座で磨いた専門的な能力を使って転職や独立を目指す受講生は4割を占める。最近はベンチャー企業への転身を希望する受講生も増え始めた。
実務経験者を求めるベンチャーと、ベンチャーに活躍の場を求める大企業内の人材との間に横たわる溝を「シリコンバレーは10年以上かけて埋めた」。ベンチャーに人材を紹介するグロービス・マネジメント・バンクの加藤隆哉社長は語る。日本でもこの溝が解消した時、有力なベンチャーが続々と株式市場に登場するのだろう。
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