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*IAIジャパン・メールマガジン(公開版)
 
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IAIジャパン・メールマガジン第55号

2005年4月28日

 ∽∽∽ 目次 ∽∽∽
1)巻頭言 「ベンチャーの退き時」     IAIジャパン理事長  八幡惠介
2) 「エンジェルキャピタル協会(ACA) 北米サミット報告」
                          IAIジャパン理事  黒澤 篤
3) 2005年度IAIジャパン会員総会予定 《5月28日(土)》
  14:00−16:00   会員総会
  16:15−17:45   セミナー
    講演:「エグゼクティブ・コーチング」(仮題)
     アメリカン・マネジメント・アソシエーション・インターナショナル
         最高顧問 住友晃宏氏 
    その他

  18:00−20:00   懇親会 
  (詳細は別途ご案内します)


1)巻頭言 「ベンチャーの退き時」

IAIジャパン理事長 八幡惠介    

 ベンチャー起業家が事業を始めて事業計画から実績、または事業内容が逸れたとき に取る行動として、市場の変化、競合の出現、開発の遅れ、あるいは予期しなかった リスクの出現などいくつかの言い訳のパターンがある。投資家は起業家による事業計 画の提案を受けて、それを評価して投資を決定したのであるから、いかなる理由があ ろうともその計画から現実が逸れたときには投資家に方向を変えてよいかどうかの判 断を仰ぐべきである。はじめから柱を複数立てておき、一本がうまく行かなければ二 本目に移行する、というやり方もありうるが、普通は投資家が投資を決定するとき起 業家に事業のフォーカスを明確にするよう求めるので、ベンチャーで複数の柱を立て ることは難しい。提示して投資決定された事業計画は契約に準ずると考えるべきであ る。したがって計画からずれが生じたときに投資家に黙って方向転換することは一種 の契約違反であり、意図はなかったにせよ投資家をだましたことになりかねないので ある。投資家がベンチャーキャピタルであれ、個人(エンジェル)であれ、投資の際の 約束は守られなければならない。方向転換に際して投資家はあらためて評価をやり直 すかもしれないし、方向転換が誤っていると判断されれば、事業をその時点で停止 し、残余財産を投資額と時期によって配分比を決めて投資家に返却すべきであるかも しれない。これは起業家にとって苦しい選択であるが、契約社会では当然のことであ る。

 日本ではこれまでこのような契約観念は必ずしも強くなく、むしろいったん始めた 事業は歯を食い縛ってもやり遂げることが美徳とされてきた。これは太平洋戦争で玉 砕が美談となり、関わった軍人が軍神などとあがめられたのと同じルーツであろう。 一方アメリカを始め西欧諸国の軍隊は負けると思えばさっさと退却するなり白旗を揚 げて降参してしまう。これは残ったりソースを再び使うのに有効であり、玉砕してし まえば、負けた上にリソースも使い果たしてしまうので、元も子もなくなってしま い、再起は不能である。

 最近は日本でも離婚が増えてきたが、ベンチャーの盛んなアメリカでは離婚は日常 茶飯事である。結婚をベンチャービジネスにたとえれば、離婚は思わぬリスクに遭遇 したときに事業を諦めて、残った財産を清算して分配してしまう起業家の行動に似て いるように思われる。すなわち、気まずい思いをしながら結婚を続けるよりも解消し て別の相手とやり直すほうが人生を有意義に過ごせるとの考えである。ベンチャーが 盛んな国で離婚が多いのは必ずしも無関係ではないかもしれない。

 人は結婚するとき二人の生活の将来に夢を描く。家族を作り、夫婦共同で財産を作 りばら色の未来を夢見るのが普通である。ベンチャーも創業したときには未来は夢が あり、実り多い出口を期待するものである。結婚生活もベンチャーもまじめに努めて も必ず成功するわけではない。夢が破れたときにお互いに失望して冷えた夫婦関係を 維持することはベンチャーに失敗し、事業計画が達成できなくなった状況に似ている といえるのではなかろうか。もしかするとアメリカでも日本でも結婚に成功する率と ベンチャーに成功する率はそれほど変わらないかもしれない、などと思って見たりす る。

 経験をひとつ披露すれば、事業計画を評価し、数人の投資家が資金を提供してまさ に事業を開始しようとしたときに、二人の創業者の間に意見の相違が生じ、一人が チームを解消して去ることになってしまった。投資家は二人がチームを組んで事業を 分担することを前提として投資を決定したのであるから、直ちに株主総会を開くこと を要求し、幸い資金はほとんど手付かずに残っていたので、全額を投資家に返却する ことに決定した。もし、残った創業者が別のパートナーを探して事業を続けていれ ば、時間も失われ、その間のコストも発生し、事業計画が遂行されなかったことは明 らかである。したがって投資家の観点からは機会は失われたが、資金は保全されて返 却されたわけである。創業者も経営倫理に照らして正しい選択をしたといってよかろ う。この場合は従業員を雇用する前であるから、社員が路頭に迷うといった事態は発 生しなかった。かりに事業を開始した後で不測の事態に遭遇し、会社を清算する場合 には社員は職を失いかねない。結婚にたとえれば子供が犠牲者になるのと似ている。 しかし、だからといって社員の職を確保するためだけの理由で事業を続けるのは株主 資本の無駄遣いである。子供のためだけに冷えた夫婦が一緒にいることは子供のため にならない場合が多い。それよりも結婚を解消してその後も両親が子供の養育に関わ るというアメリカ型の方が健全ではなかろうか。社会環境の異なる日米の状況をベン チャーと結婚を対比したのは多少こじつけであるかもしれないが、カルチャーの影響 があることは間違いないし、早い時点で諦めをつけ、見切る、というアメリカ型のカ ルチャーが両方に左右していることは疑いない。ひるがえって日本のとことんまで頑 張るカルチャーには疑問を感じる向きも多かろう。ベンチャーでは危険な発想といえ る。すくなくともベンチャーでは退き時が大切である。


2) 「エンジェルキャピタル協会(ACA) 北米サミット報告」

IAIジャパン理事  黒澤 篤    

 ベンチャー投資というとベンチャーキャピタル(VC)の主戦場のような印象がある が、米国ではその様相が変わってきている。ニューハンプシャー大学の調査によると 2004年にVCは約$18Bの投資を行う一方でエンジェルは約$22.5Bの投資を行っている。 エンジェル投資の大半はシードラウンドで行われ、VC投資の大半はレイトステージで 行われている。エンジェル投資された起業プロジェクトは48,000件に上るがVCの第一 ラウンド投資は800件に留まる。エンジェル投資により昨年14万人の雇用が創出され ている。エンジェル投資の約8割は所謂ハイテク分野である。

 ベンチャ業界でエンジェルの果たす役割が鮮明になってきた事を機にエンジェル投 資グループ(以下「投資グループ」)をネットワーク化する団体ACAが昨年生まれ た。この団体のミッションはエンジェル投資グループの設立の支援や、エンジェル投 資家の啓蒙、各種業界標準の確立等を通じてエンジェル投資活動を活性化させる事に ある。

 ACAは約80のエンジェル投資グループを集め4月の始めにサンフランシスコで2日間 に渡り北米サミットを行った。会議では各投資グループから、どのようにしてグルー プを設立したか、法人形態は何か、運営上の経営・財政課題は何か、メンバーの獲得 と維持、企業価値の算定方法、出口の方法等についての討論がなされた。パネルでは Kleiner Perkins、IVP、Mayfieldのような著名なVCも参加し、意見を交換した。

こうした討論の中から浮かんできた一般的な認識として下記の点を特筆したい。
 1) 投資グループの多くはここ数年間に活動を開始している
 2) 投資グループの運営手法と課題には多くの共通点がある
 3) VC業界との定常的なパートナーシップは依然低調である
 4) 個々のエンジェルの投資熟練度には数十年の格差がある
 5) 投資成績を評価するには4~5年後の出口時期を待つ必要がある

 ACAと同様の団体がEUにも存在する。各国に支部があり、ディールフローの共有や協 調投資が行われている。特徴としてはエンジェル投資を行った時点で税制上のメリッ トが発生する制度が整備されている事がある(例 UK)。

 米国の投資グループの草分けは1994年に創立されたBand of Angels (Menlo Park, CA)である。シリコンバレーの名立たる起業・経営経験者が構成する投資グループ で、合計150件に行われた約$100Mの投資の内約3割が出口に到達している。上記のよ うな課題に対する解決方法についてBand of Angelsがロールモデルと認識されてい る。同グループの創始者に因んで、エンジェル投資活動を推し進めた貢献に対して送 られるHans Severiens Awardが今年から贈られている。

 新たな価値を創造するベンチャー活動の基盤を構成しているのはエンジェルである という事が明確になった会議であった。エンジェル投資を産業として育成してゆく活 動は世界的にまだ緒に着いたばかりであるが、一方で機会の山であると言える。


以上。

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