創業期企業における企業統治のあり方

1.はじめに

創業期の企業統治研究の背景

  創業期企業の特徴

1.トップは大株主であり、創業者である……「会社は俺のものだ」

2.取締役や監査役も実質的にはいない……経営監視機構がない

3.中間管理者も雇えない……ワンマンにならざるを得ない

4.社員も兼務が多い……牽制的な組織が組めない

5.試行錯誤、朝令夕改は当たり前……変更連絡すら困難

6.慢性の人手不足……意見徴集や打ち合わせの時間も取れない

7.ルールがない、不徹底……やりなおし、捜し物、効率が悪い

8.コストパーフォーマンスを厳しく考える……優先順位を間違う

9.それぞれ成長段階での重点課題がある……それ以外は二の次

  報告の視点

1.創業期企業の課題

1)何故失敗するのか

2)創業期企業のリスク

2.企業統治のあり方

1)創業期企業における企業統治

* 商法改正のベンチャービジネスへの影響

* 企業統治の定義と目的

2)企業統治のため体制と内部統制

* 企業統治ための体制

* 旧ナスダック・ジャパンへの株式上場基準

3.企業統治のための倫理観と人材

1)起業家に求める行動規範

2)起業家、経営チーム、監査役の資質

4.IAIJの企業統治支援の仕組と提言

1)創業期企業の企業統治への提言

創業期企業の経営課題 5 創業期企業の資金調達 6 資金・借入金の調達先 7

2.なぜ失敗するか

新規公開会社の推移 9 最近のIT業界の倒産状況 10 ベンチャー企業の失敗事例 11 失敗から読み取れること 12

 失敗の原因

1.経営者の資質や意識に問題

1)社長のリーダーシップ不足

* 希望的観測と事実の混同、 嫌なことに目を向けない、 ビジョンがない 、先頭ニ立って引っ張れない
* 部下に厳しくできない、 優柔不断、 意志決定を避ける

2)経営戦略の甘さと意思決定のミス

* 市場・顧客・販売チャネル戦略、経営環境・競合の把握、販売中止や撤退

3)社長の倫理観が低い

* 有名になりたい、金儲けしたいという私利私欲が露骨、社長の給料が極端に高い

2.基本的な管理を疎かにしている

1)商品やサービスを作り出すプロセスの欠如

* 職務分掌、責任と権限不明、規程・基準がない

2)日常管理体制の欠如

* 内部牽制、お客様本位の管理、キャッシュフロー管理

3)実行計画の不十分さと実行度の低さ

4)社員の教育訓練の不足

3.創業企業のリスク

  創業期ベンチャー企業のリスク

1.公私混同・倫理観欠如

2.経営トップの資質

3.起業家の事故

4.反社会的勢力の侵入

5.戦略立案・意思決定

6.資金繰り・財務体質

7.商品・サービス

8.法令違反・権利登記

9.採用不能・労務トラブル

10.資産の破壊・盗難・事故
11.販売不振・顧客トラブル
12.技術開発力
13.製造能力
14.環境問題
15.情報システム
16.風評
17.海外取引
創業期ベンチャー企業のリスクと対応例 16 株主代表訴訟と内部統制 17

4.創業期企業における
       企業統治

  最近の商法改正事項

97年10月

合併法制の改正

99年10月

株式交換・移転制度の創設

01年04月

会社分割・分社化制度の創設

01年10月

金庫株の解禁

02年04月

株式の多様化
株式発行やストックオプションの規制緩和
会社関係書類の電子化

02年5月

取締役の責任の限定
株主代表訴訟の合理化
監査役の機能強化

03年から

企業統治(コーポレートガバナンス)改革

  企業統治
   (コーポレートガバナンス)とは

  企業の継続的な成長・発展を目指して、より効率的で優れた経営が行われるよう、経営方針について意思決定するとともに、経営者の業務執行を適切に監督・評価し、動機付けを行っていくしくみ (経済同友会)

  企業統治(コーポレートガバナンス)原則

会社をあずかる経営執行者がその責任を全うすることを確保するしくみ

@  アカウンタビリティーとディスクロージャー

A  会社の機関(株主総会・取締役会・監査役会)の機能強化

(日本コーポレートガバナンスフォーラム)

企業統治(コーポレートガバナンス)の目的 企業統治の効果

5.企業統治のための
     体制と内部統制

日本の企業統治の仕組 アメリカ型の企業統治の仕組み

  コーポレートガバナンスの勘所は
  経営者の倫理観であり制度ではない

◆ コーポレートガバナンスのための機構作り

− 適法かつ適正な経営判断や業務執行を監督する取締役会と経営を監査する監査役

− 不正や不適切な行為、公私混同を招かない社内体制を構築

◆ 経営としての理念、倫理観を高める

− 経営理念、経営倫理、行動指針等を定め社内外への啓蒙と経営トップ自らの遵守

− 取締役・執行役員は倫理観に基づき善管注意義務・忠実義務にしたがって業務遂行

 旧ナスダック・ジャパンへの
    株式上場基準

 コーポレートガバナンスに関して

 企業経営の健全性として、経営管理組織の適切な整備・運用がなされていること。具体的例としては監査役が役員の配偶者または二親等以外であること。親会社からの経営の独立性が確保されていること。

◆ 企業内容の開示の適切性として、リスク情報など企業内容の開示が適切に出来る体制が整備され、運用されていること。

 ナスダック・ジャパンの求める
  コーポレート ガバナンス

決算短信等へのコーポレートガバナンスの状況開示

a.意思決定の仕組み

・ 取締役会およびその他の意思決定機関の状況

b.役員構成

・ 取締役会の構成(常勤,非常勤等)

・ 常勤取締役の兼務の状況

・ 社外取締役のいる、いないかの別

・ 執行役員制度の導入について

c.内部監査機能の状況及び業務遂行を行う 上で設置している委員会等

d.今後のCG強化、充実のために特に検討していること

アメリカ型の企業統治の仕組み

 
6.起業家に求める行動規範

 IAIジャパンの
    エンジェルの行動規範

1.社会的使命を認識し、社会へ貢献します。

2.専門家としてたゆまない研鑽をします。

3.支援・投資の判断は自己責任で行います。

4.起業家個人に係わる守秘義務を徹底します。

5.企業機密の守秘義務を徹底します。

6.法令や社会的規範を遵守します。

7.支援する企業と利益相反する行為は行いません。

 IAIJの期待する起業家の行動規範

1.常に創業の精神を忘れず、健全なる事業創造に向け全力を注ぎ、成功に向けチャレンジし続けることをコミットします。

2.チャンスとリスクに対し、鋭敏な感性を磨くとともに迅速に行動します。

3.起業家には公的責任があることを認識し、公私峻別を徹底します。

4.投資家等への経営やリスクに関する情報の開示義務を認識し、経営の透明性を徹底します。

5.企業の信用を重んじ、守秘義務の重要性を認識して行動します。

6.反社会的な行為に巻き込まれないように行動します。

7.ステークホルダーズとは常にフェアーな関係を築くよう努めます。

 企業倫理

1.当社は世界各国の法令を遵守して活動します

2.当社は世界各国の文化、慣習を尊重して活動します

3.当社は常に透明性ある経営を行い、経営情報の公開に努めます

4.当社はステークホルダーズの要求にたいし誠実に説明責任を果します

5.当社経営幹部は善管注意義務、忠実義務を常に意識して経営にあたります

6.当社経営幹部は不正や不法な行為の未然防止のために内部牽制、 内部統制の効く体制を作り経営に当たります

7.当社経営幹部は別に定める「社員行動規範」を自ら遵守するとともに、従業員に対してその遵守を指導し、監督に当たります

 社員行動規範

1)会社の資金・資産・情報など会社の財産を公私混同しません

2)事実に反する経費を会社に請求したり、受け取ったりしません

3)当社と競合する事業に係わったり、当社の利益を犠牲にして自分や第三者の利益を図ることはしません

4)会社の設備、備品、資金、情報を指示された業務目的以外に使用しません。また、紛失、漏出、盗難、不正仕様がない様に管理を徹底します

5)事業活動に関する記録や報告を、正確かつ正直に行うとともに、法令ならびに社内規定に則り保存します。

6)顧客、協力会社、地域社会への説明や約束、公的機関への報告は誠実かつ確実におこないます

7)私生活でも社会人としての品位を保ち、健全な社会常識から逸脱した言動のないよう自律します

8)性別、人種、信仰、出身、価値観などによる差別、プライバシーの侵害を行いません。また、そうした差別や侵害を放置しません

9)会社で働く従業員、協力会社社員、顧客、地域社会の健康と安全、ならびに地球環境の保護に配慮した仕事をします

10)業務に有形無形の他人の財産を使用する時は、不適切な入手、使用、処分が ない様に十分配慮します

 
7.起業家・経営グループ
       監査役の資質

 成功のために起業家が
     保有すべき資質

1.確固たる人生観・経営観に基づく明快な経営理念・将来ビジョンを保有

2.好奇心旺盛で常にお客様のニーズに応え新しい技術、商品、サービスを創造

3.お客様本位で斬り込み隊長としての率先垂範

4.失敗があってもまた勇気を出して挑戦 し、常に前向きでプラス思考で行動

5.強い意志と情熱、初志貫徹力、実行力を持ってリスクに挑戦、冷静にリスクをミニマイズ

6.人は財産であると言う信念のもとに人材育成

7.自分の弱みを客観的に率直に認識し、それを補完する人材を求め、活用する才能

8.アドバイザーの意見や指導を謙虚に傾聴

9.合理的な組織構築と業務運営力

10.法にしたがい、倫理に照らして、誠実な経営実行

 経営チームの資質

T.成功のために経営パートナーが保有すべき資質

1.何も戻ってこないかもしれないにもかかわらず、起業家とともにスタートアップにかける高邁な思想と情熱がある

2.起業家とともに、事業の成功に向けて全力を傾注する旺盛な責任感を持っている

3.心身ともに充実しており、起業家とともに常に前向きに行動する気力がある

4.誠実であり、起業家、経営チームメンバーと強い信頼関係を築ける

5. 起業家の弱みを補佐できるコンピテンシーを保有し、起業家と一心同体の気持ちで経営を担う

U.選任してはいけない経営パートナーの資質

 監査役の資質

1. 真面目に、真摯な態度で事実を正しく調査し、客観的に、公正な視点から意見形成ができる

2. 企業は小さくとも公的な存在であることを強く認識し、法令や企業倫理についての遵守を指導できる

3. 遵法性、妥当性の視点から監査役として持ち得た意見については、使命感と勇気をもって社長・取締役に勧告・助言・提言ができる。

4. 創業期においては社長・取締役に対してコーポレートガバナンスの教育が出来、目付役が出来る

5. 社長との信頼関係を築き、経営のバランスが保たれるように、経営リスクをミニマイズできるように社長の相談相手になれる

7. 創業期においては、監査もさることながらコンサルタントとして組織に入り、教育と改善の支援ができる

8. 公正な意見を忌憚なく言うために、多額な報酬を期待しない

 コーポレートガバナンスのための
        監査役への期待

  取締役の職務執行の監査を通じて、企業の健全性と透明性を確保する

  取締役会での意思決定プロセスの健全性 (経営判断原則)を確認する

  取締役が行う業務執行の健全性を確認する

  代表取締役社長以下取締役との緊張感ある信頼関係を構築し忌憚のない質問、意見具申を行う

  代表取締役社長と「良い企業統治」を実現し、「企業の価値を高める」という共通の目標のために相互に協力する

  社会的期待を認識しコーポレートガバナンスの強化に向けて「社外の視点」を強く取り入れる

8.IAIJの
  創業期企業の企業統治に関する提言

IAIジャパンのビジョン

  アントレプレナーによるベンチャー起業を促進し、その成長を加速することが、技術の発展と経済の活性化をもたらし、社会への貢献となる。

企業の健全な成長のために 起業家と監査役・取締役マッチングと教育の仕組み

 IAIジャパンからの提言

  IAIジャパンは株主や支援者などステークホルダーズの付託に応え、企業の健全な成長を図るには、 創業期から企業統治が必要と考え 起業家を支援します。

 IAIジャパンは起業家を支援する前提として「起業家に期待する行動規範」を提示し、起業家が創業期からコーポレートガバナンスに意を払うことを提言します

 IAIジャパンはコーポレートガバナンスの要となる社外監査役・社外取締役の早期の選任を提言します

 IAIジャパンにはコーポレートガバナンスを支える専門的なエンジェルが多数在籍するので、気軽に相談し、支援を受けてることを提言します