第2部 パネルデイスカッション

「創業企業におけるコーポレートガバナンス」

コーデイネーター:IAIジャパン会長八幡惠介氏
パネリスト:
 ベンチャー企業監査役・・・・・エンジェル証券監査役瀬戸公介氏
 ベンチャー起業家・・・・・・・CMジャパン社長日下部耐史氏
 ベンチャーキャピタリスト・・・日本エンジェルズ・インベストメント(株) 社長井浦幸雄氏
 公認会計士・・・・・・・・・・アタックス会計グループ林 公一氏

(以下敬称略)

八幡:IAIジャパンは「実り多いエンジェル活動」を目指している。「実り」にはcapital gain や equity の獲得もあるが、ベンチャーの成功例は実際には極めて少ない。その成功率を高めるためには、コーポレートガバナンス(以下CGという)が極めて重要な役割を果たすと考える。 本日はそれぞれ異なった立場の4人のパネリストに出席頂いているが、先ず夫々の立場からCGを論じて頂きたい。

瀬戸:大手証券会社に勤めて、初めて支店長として支店開設業務に携ったのが1973年第1次オイルショックの過去に例の無い景気の落ち込みの激しい時期であったが、当時は同時に第1次ベンチャーブームの時代でもあった。手掛けた取引先には、マツモトキヨシ、マブチモーター、トステムなどその後大きく育ったものもある。この頃は銀行がしっかりして、CGの観点からチェックする役割を果たしてくれた。その銀行がバブル期に自らCGを放棄して、今日の日本の不幸が始まった。
1994年CGを見直す気運がでて、当時のIBJ中村頭取を財界代表に、早稲田大学奥島総長を学界代表とする会が発足し、1998年に「CG原則」が確立した。その後数多くの商法改正が行われ、CGはよい方向に向かっている。日本で次の世代にCGを監視していく役割を担うのは、年金、投資顧問、投資信託等の機関投資家になると考えている。

CGとは何かという問いに私は次のように答える。
@強いリーダーシップ・・・良い事を目指しても指導力がなければ失敗する。
Aアカウンタビリテイー・・・強い指導力を皆に納得させる力である。例えば単に事業報告の説明をするだけでなく、当期目標の設定を行うことなどもアカウンタビリテイーに相当する。なぜこの目標を設定するのか、結果はどうだったのかを納得させなければならない。
Bデイスクロージャー・・・透明性、公平性である。
この3点が担保されれば、問題が起こるはずは無い。

CGは企業価値を高めるための一つの有力な武器である。現在その直接の担い手が監査役会および監査役である。
企業経営で性善説はだめ、性悪説に立って会社を指導しなければならない。つぶれる会社の大半はCGの欠陥によるものである。

日下部:CMジャパンは、ブロードバンドにフォーカスを合わせた会社で、動画広告、プロモーションビデオの製作配信を行っている、設立後2年も経たない会社である。
CGという言葉は半年前に初めて知り、本日の三澤さんの講演で、はじめてその真髄を知った。CGは今後の経営の道しるべになることが理解できたが、ほとんどのベンチャーにとっては未知の分野ではないかと思う。

CMジャパンで実行しているCGは
@週報の発信・・・株主、取締役に発信することによって自らをしばる。発信の内容には競合他社に知れるとこまる秘密まで入れている。
ACMジャパン戦略会議を2ヶ月に1度開催・・・・会社状況、市場状況、売上状況を報告。多くの意見が出される場となっている。
以上のデイスクロージャーにより出資者、社外取締役にも一体感のある経営を目指している。

井浦: 日本エンジェルズ・インベストメントは純粋な意味のVCではなく、個人投資家の集団である。現在17社に投資している。
CGを考える場合"失敗の理由"が大変参考になる。ブレークスルーパートナーズの赤羽氏が纏められた失敗事例の中に、VCが出資したベンチャーがまだ売上が無いのに、社長に高給を支給などの例が示されているが、これはVCが出資したにもかかわらず、資金使途のモニターを怠った例で、バブル期にはこのような事例が数多くあった。社長の夢をかなえるのに、実績に応じたステップをふまずに、一度に実現しようとして失敗した例もある。 経営の内容が外部からチェック出来るガラス張りの体制がぜひ必要で、開示が充分でない場合は、株主から要求するべきである。
日本エンジェルズ・インベストメントでは出資先に社外取締役をいれて、経営体制をモニターする体制をとっている。このように出資先の経営内容が分かるような体制とともに意見を言える体制を取っておくことが最も重要なことと考えている。

次に商法改正に関連して有効活用の例を2点あげる。
@ストックオプションの有効利用
小人数を対象とした私募社債に新株予約権をつけて無担保・無保証で発行し、2,500万円調達した例がある。
A会社書類電子化の解禁により郵送費等単位コスト削減が可能となり、小額の出資を受け入れることが出来るようになった。

林:アタックス会計グループは監査ではなく、経理のアウトソーシングや種々アドバイスを生業としており、私自身は、M&Aやdue diligence など出口戦略でのアドバイスをしてきた。
CGとは公開を前提としたものであるが、では公開とはどのような意味があることか。公開とは自らの経営権をあきらめることである。100パーセント自分のものなら何をしようと自由だが、10パーセントでも他人の資本が入ったら、自分の自由はなくなり、コントロールを、つけざるを得ない。それがCGすなわちリスクを分散するスキームである。システマテイックにリスク分散がなされている会社は、意志決定が上手く機能し経営力がある会社ということになる。
現在私は企業を公開させるに当たって証券会社との交渉に携わっている。昔は証券会社の審査部も、ある程度融通がきき、営業努力が通用したが、リキッドオーデイオジャパンの事件以降様相はまったく変ってしまった。
有言実行しない会社(予想と実績の分析ができないような会社)には金はだせない。・・・これが現在マーケットの求めている企業像である。・・・そういった意味で、創業4年の会社が公開するのと、創業20年の会社が公開するのではどちらが簡単かといえば、4年のほうが簡単である。CGという意識を初めから持つと持たないで大きなギャップが生ずるからである。

八幡:創業時からCGの意識を持つ重要性がよく分かる話だった。瀬戸さんのお話とも共通する点が多いが、20年と4年という比較について、瀬戸さんのご意見は。

瀬戸:林さんのご意見にはまったく同感だ。
現在公開にとって最大の難関は、監査法人と引受審査である。引受審査には、監査役面接があり、これがうまくいかないと、公開させない。従って、監査役が大切ということにもなる。
20年と4年の話であるが、家業からスタートすると公開するに当たって従来のしがらみを解きほぐすのに4,5年は掛かってしまいその間にマーケットが変ってしまうことになる。CGは早ければ早いほどよい。

八幡:この度の商法改正で、ストックオプションが誰にでも、いくらでも発行できるようになったが、改正に向けいろいろ努力をしてこられた井浦さんのご意見を伺いたい。

井浦:皆工夫している。・・堀紘一さんはベンチャーに対するコンサルテイングの報酬を現金でなくストックオプションで貰うことにした。
徳山市の西京銀行は、融資に当たってストックオプションを受け取り、金利や融資期間を優遇する措置を取った。
このように環境は昔に比べて格段によくなっており、現在の商法をまず生かして、失敗を恐れず起業する人が増えればよい。

八幡:リスクをとった上での失敗は、大変貴重な経験である。簡単に成功したベンチャーより、リスクをマネージして成功したほうがずっと強い。リスクをとって失敗した者に失敗者の烙印を押すことは、社会として絶対に避けなければならないことである。
ベンチャーを支援する仕組みを考えておられる立場で、ストックオプションをガバナンスのきいた使い方をすることについて、林さんはどのように考えるか。

林:ストックオプションをいくら出しても企業価値は同じ。オプションを付与すればそれだけ企業価値を割り算していくことになる。大切なのはどのように売り上げを伸ばし、企業価値を高めていくかということだ。それを忘れてストックオプションの発行に走るのは本末転倒。
顧客から何パーセントまで出せばよいかという質問があれば、公開時の潜在株が10パーセントになるように資本政策を組むよう話している。

八幡:この辺で会場からのご質問やご意見を受けたい。

赤羽雄二:CGでもっとも大切なことは、言うべきことをはっきり言うことである。性悪説にたってはっきりものが言えるのは、社長や社長が選んだ社内取締役ではなく、社外取締役であるということは、現在米国のみならず世界で認知されている。

IAIジャパン会員のエンジェルが、社外取締役としてベンチャーに入って言うべきことを言うのに必要な条件は次の二つである。
@何が正しくて何が正しくないか見分ける力=質問する力
A正しいと思うことを言う勇気
エンロンのケースでみると
@気がついても放っておいた人
A少し疑問に思って質問したが納得してしまった人
B気がつかなかった人

以上のうち@は有罪、ABは無罪だが恥ずかしい。IAIの人はABになってはならない。その業界の専門家でなくても問題点を把握できる能力と、その問題点を追求する能力を培わなければならない。
「社外取締役やフルタイムでない監査役には会社が分からない」という議論を聞くがまったく当を得ない。社外取締役たちこそ性悪説の立場で責任を果たせるのである。

林:社外取締役が機能しているのは、人の目を気にして経営することがリスクマネージメントにつながっているという要因と、様々な英知を結集できるという要因によるものであり、あくまでも、ものを言うボードであるということだ。

瀬戸:私はあくまでも人の問題ではないかと思う。今の商法でも監査役が取締役の行動を充分チェックできるし、首のすげかえを提言することすら可能であるのだから、ベンチャーの取締役、監査役を十分教育すれば、社外取締役と同じ役割が果たせると考える。

田中繁夫:監査役は意思決定のチェックは出来ないのではないか。

瀬戸:議事録をみて後からでもおかしいと言えばよい。

井浦:今回の商法改正で監査役は「取締役会への出席義務、意見陳述義務」が生じた。取締役の法令・定款違反の決議および著しく不当な決議を防止するために発言をしなくてはならない。

赤羽:社内取締役の一番大切な仕事は、CGではなくどのように儲けるかの戦略の方向を決めることである。またベンチャーの社長はカリスマで取締役が発言しづらいケースが多い。これらの背景をみればやはり仕組みとして社外取締役が必要である。

八幡:そろそろ時間になりましたので、この辺で終了させていただきます。
本日は大変活発なご議論、貴重なご意見を頂きまことに有難うございました。これが必ずや今後の皆様の活動に役立つものと期待します。


以上。