商法改正と創業期企業のコーポレートガバナンス

はじめに

  • 創業期から成長期を経てベンチャー企業が市場へ株式公開を果せるか、公開しないまでも企業として安定した業績を上げ継続した成長を果せるかは、資金やスウェットを提供する株主やエンジェル、および顧客や市場の信頼を得られるか にある。

  • 投資をするエンジェルやベンチャーキャピタルの安全性を高め、スウェット(汗)で起業家を支援しストックオプションを得るエンジェルに成果をもたらすのは偏に
    • 起業家・経営者がコーポレートガバナンスに意を注ぐ
    • 監査役がコーポレートガバナンスに対する役割を果す
    ことにかかっている。

  • ここ数年の商法改正を踏まえ、創業期のベンチャー企業に対するIAIジャパンとしての提言と委員会による「コーポレートガバナンスに関する研究の成果」を報告する
新規公開会社の推移 IPO投資に関する関心度 ベンチャー企業の失敗事例 失敗から読み取れること 失敗に関する問題点の整理

最近の企業の不祥事やトラブル

  • Y食品・N食品の産地不正表示と詐欺行為
  • K香料の未許可材料の使用
  • M銀行のコンピュータ統合トラブル
  • N電気の防衛庁への水増し請求・天下り受入れ・贈賄
  • E工業の違法配当と会計監査人への贈賄
  • N航空会社の株主優待券の換金による総会屋対策費用捻出
  • M自動車会社のアメリカにおける集団セクハラ訴訟事件、海の家に係わる総会屋への利益供与、顧客クレームの隠蔽によるリコール隠し
  • Y乳業会社の中毒事件
  • N原子力工場ウラン臨界事故
  • K製作所の総会屋への利益供与

最近の商法改正事項

    97年10月合併法制の改正
99年10月株式交換・移転制度の創設
01年04月会社分割・分社化制度の創設
01年10月金庫株の解禁
02年04月株式の多様化
株式発行やストックオプションの規制緩和
会社関係書類の電子化
02年5月取締役の責任の限定
株主代表訴訟の合理化

監査役の機能強化
03年からコーポレートガバナンスの改革

商法改正とベンチャー企業への影響 1

ベンチャー企業の創業と成長の支援

  1. 株式交換制度
    • 既存会社を100%子会社にする場合に利用するが、 ベンチャー企業の出口政策としてのM&Aが株式交換で容易となる

  2. 会社分割制度
    • 企業内起業家の独立・スピンオフに向けての親会社へのインセンティブとなる

    • 人的分割による子会社の再編や中小企業の株主間紛争の解決に役立つ

    • 物的分割は検査官の調査不要であり、債務の継承も債権者個別承認不要のため組織再編のスケジュールが立てやすい

  3. 株式の最低単位の廃止と単元株制度の採用
    • 定款で一定数の株式をまとめたものを一単元とし、一単元につき一個の決議権付与により資金調達の容易化と事務手続の簡素化が図れる

    • 株式分割の際一株あたりの純資産が5万円以下でもよくなったことにより、一株あたりの純資産が小さくても株式分割が可能になり、高株価・低流動性が解決し市場からの資金調達が容易になる

    • 会社設立時の株式の発行額一株5万円以上という制限が撤廃され、無額面化出来るようになったので、資本政策の自由度が拡大した。

商法改正とベンチャー企業への影響 2

  1. 種類株の自由化と強制転換条項の導入
    • 無議決権株式、決議権制限株式により株主総会の定足数確保がしやすくなり、株主管理 コストの削減も可能になる

    • 普通株と権利強化された種類株の価格差を設ける事が可能となり、起業家の持株比率を増やす手段として使える。

    • 種類株式に重要な決議事項への拒否権を設定することにより、公開前の株主権利が強化されるので、VC等が出資し易くなった。

    • IPOによる種類株式の強制的な普通株への転換により、起業家の権利が守られる

  2. ストックオプション制度(新株予約権発行)の拡充
    • 付与対象者・付与数・行使期間の制限が大幅緩和され、経営者や従業員への動機付け、エンジェルや弁護士・コンサルタント等スエットで支援する人達へへの報酬として発行できる。

    • ストックオプション付与において既存株主の権利を守るために、株主以外の第三者を対象とするときは株主総会の特別決議を必要とする

商法改正とベンチャー企業への影響 3

  1. 取締役の責任軽減と社外取締役の責任の限定
    • 取締役の責任については「職務を行うについて善意かつ重大な過失の無い場合」、一定の限度額まで軽減できるようになり、株主代表訴訟による経営活動の萎縮を防ぐことが出来る

    • 社外取締役については予め会社との間で責任を制限する旨の契約をすることで、リスクの多いベンチャー企業への社外取締役の導入が容易になる

    • 取締役(執行役)に対する株主代表訴訟については制度の合理化が図られ、「監査役の熟慮期間の延長、公告または株主に対する通知義務、和解に関する手続き整備、会社の被告取締役への補助参加」が決まった

  2. 会社関係書類の電子化
    • 株主総会の招集、株主総会決議への電磁決議権行使、決算広告のホームページ掲載会社の作成する書類(定款・株主名簿・株主総会議事録・取締役会議事録・計算書類および附属明細書等)の電磁的報告をインターネットによるメールやホームページにより行うことにより、株主管理事務の効率化・合理化による管理コストの低減が図れる

    • 上記により株主への情報公開がタイムリーにスピーディーに実施できる

商法改正とベンチャー企業への影響 4

監査役制度の改正

  • 監査役は取締役会へ出席する義務と必要ある場合の意見の陳述義務を負う
    • 取締役の法令・定款違反の決議および著しく不当な決議を防止し、取締役の業務執行監査を通じたコーポレートガバナンスの実効性を確保するが、監査役にどのように情報を提供するか

  • 社外監査役の要件はそれまで一度もその会社の取締役・支配人・使用人になったことが無いこと
    • 当該企業との関係が希薄な監査役の選任が必要となるがどのように適切な人材を確保するか

  • 監査役の任期は地位の安定と独立性の確保のために4年間とした
    • 監査役の欠員が発生しないように監査役の増員または予備軍の確保が必要となるがどのように対応するか

  • 監査役は辞任にあたり株主総会での意見陳述権を有する
    • 本来監査役の解任権を持たない取締役から辞任を強制されることを防止し、監査役の独立性と権限の強化を図ることが目的で安易な解任が出来ない

商法改正とベンチャー企業への影響 5

経営システムの見直し

 ◆取締役会

    • 取締役会を経営の意思決定と監視機能、業務執行機能に分離する

    • 業務執行機能を担う執行役員をおく

    ことにより意思決定のスピード化、責任の明確化、監督機能の強化をはかりコーポレートガバナンスの充実をはかる
    ベンチャー企業でも監査役制度をそのままにして取締役と執行役の分離は可能である

 ◆株主総会

    • 中小企業を対象に総株主同意による総会召集手続を省略できる

    • 電子メールによる召集と議決権行使ができる

    ことにより株主事務の効率化と株主参加の容易性、総会の成立が容易になる

コーポレートガバナンスとは

  • 「企業の経営効率と株主に対する説明責任をチェックする活動であり、より広く企業目的・目標を達成するための戦略や手段、行動が常に合法的であり、倫理性が保たれるような企業体制を企業自らが確立することである。」

    (日本経営品質賞審査基準書)

  • コーポレートガバナンス原則
    • @ アカウンタビリティーとディスクロージャー
    • A 意思決定機関(代表取締役・取締役会・
        監査役会・株主総会)の機能強化

    (日本コーポレートガバナンスフォーラム)

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コーポレートガバナンスの目的 日本のコーポレートガバナンスの仕組 アメリカ型のコーポレートガバナンスの仕組み アメリカ型のコーポレートガバナンスの問題点

ナスダック・ジャパンへの株式上場基準

コーポレートガバナンスに関して

  • 企業経営の健全性として、経営管理組織の適切な整備・運用がなされていること。具体的例としては監査役が役員の配偶者または二親等以外であること。親会社からの経営の独立性が確保されていること。

  • 企業内容の開示の適切性として、リスク情報など企業内容の開示が適切に出来る体制が整備され、運用されていること。

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ナスダック・ジャパンの求める
   コーポレート・ガバナンス

決算短信等へのコーポレートガバナンスの状況開示


  1. 意思決定の仕組み
    • 取締役会およびその他の意思決定機関の状況
  2. 役員構成
    • 取締役会の構成(常勤,非常勤等)
    • 常勤取締役の兼務の状況
    • 社外取締役のいる、いないかの別
    • 執行役員制度の導入について
  3. 内部監査機能の状況及び業務遂行を行う上で設置している委員会等

  4. 今後のCG強化、充実のために特に検討していること

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コーポレートガバナンスの勘所は
 経営者の倫理観であり制度ではない

◆ コーポレートガバナンスのための機構作り

  • 適法かつ適正な経営判断や業務執行を監督する取締役会と
    経営を監査する監査役
    • 取締役会の定期的な開催、株主総会の開催、監査報告を聞く役員会の開催

  • 不正や不適切な行為、公私混同を招かない社内体制を構築
    • 第三者による業務の再チェック、内部統制、不正行為者に対する厳しい処分

◆ 経営としての理念、倫理観を高める

  • 経営理念、経営倫理、行動指針等を定め社内外への啓蒙と経営トップ自らの遵守
    • 公私混同の排除、お客様本意の活動、IR活動

  • 取締役・執行役員は倫理観に基づき善管注意義務・忠実義務にしたがって業務遂行
    • 背景や目的・プロセスを明確にした意思決定と行動、

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株式代表訴訟と内部統制の仕組

内部統制について

◆ 内部統制の目的は

◆ 目的を達成するために

創業期ベンチャー企業のリスク1 創業期ベンチャー企業のリスク1

創業期ベンチャー企業のリスク 2

IAIJの期待する起業家の行動規範

  1. 常に創業の精神を忘れず、健全なる事業創造に向け全力を注ぎ、成功に向けチャレンジし続けることをコミットします。
     
  2. チャンスとリスクに対し、鋭敏な感性を磨くとともに迅速に行動します。
     
  3. 起業家には公的責任があることを認識し、公私峻別を徹底します。
     
  4. 投資家等への経営やリスクに関する情報の開示義務を認識し、経営の透明性を徹底します。
     
  5. 企業の信用を重んじ、守秘義務の重要性を認識して行動します。
     
  6. 反社会的な行為に巻き込まれないように行動します。
     
  7. ステークホルダーズとは常にフェアーな関係を築くよう努めます。
     

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IAIジャパンのエンジェルの行動規範

  1. 社会的使命を認識し、社会へ貢献します。
     
  2. 専門家としてたゆまない研鑽をします。
     
  3. 支援・投資の判断は自己責任で行います。
     
  4. 起業家個人に係わる守秘義務を徹底します。
     
  5. 企業機密の守秘義務を徹底します。
     
  6. 法令や社会的規範を遵守します。
     
  7. 支援する企業と利益相反する行為は行いません。
     

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起業家・経営グループ・監査役の資質と役割

成功のために起業家が保有すべき資質

経営チームの資質


監査役の資質

成功のために起業家が保有すべき資質

  1. 確固たる人生観・経営観に基づく明快な経営理念・将来ビジョンを保有
  2. 好奇心旺盛で常にお客様のニーズに応え新しい技術、商品、サービスを創造
  3. お客様本位で斬り込み隊長としての率先垂範
  4. 失敗があってもまた勇気を出して挑戦 し、常に前向きでプラス思考で行動
  5. 強い意志と情熱、初志貫徹力、実行力を持ってリスクに挑戦、冷静にリスクをミニマイズ
  6. 人は財産であると言う信念のもとに人材育成
  7. 自分の弱みを客観的に率直に認識し、それを補完する人材を求め、活用する才能
  8. アドバイザーの意見や指導を謙虚に傾聴
  9. 合理的な組織構築と業務運営力
  10. 法にしたがい、倫理に照らして、誠実な経営実行

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起業に失敗する危険性のある起業家の資質

  1. 創業の高い志と使命感(企業家マインド)が感じられない
  2. 理念度が低く、起業の動機や夢を具体的なイメージで語れない
  3. 起業家として、経営理念・経営ビジョンが描けていない
  4. 何がなんでもやり遂げようとする初志貫徹力が感じられない
  5. 唯我独尊の境地にあり、事業に対してのアドバイスを聞く耳を持たない
  6. 人間嫌いで、メンターやパートナー・幹部社員とコミュニケーションができない
  7. 自分の哲学、信念に乏しく、何でも丸く治めようとする

起業に失敗する危険性のある起業家の条件

  1. 心身両面でのタフさが無く、健康に不安がある
  2. 家族の理解、協力が得られない
  3. 親の扶養・介護、子供の教育などに悩みを抱えている
  4. 当面の必要生活費をまかなうだけの個人資産、キャッシュフローがない

経営チームの資質

T.成功のために経営パートナーが保有すべき資質

  1. 何も戻ってこないかもしれないにもかかわらず、起業家とともにスタートアップにかける高邁な思想と情熱がある
  2. 起業家とともに、事業の成功に向けて全力を傾注する旺盛な責任感を持っている
  3. 心身ともに充実しており、起業家とともに常に前向きに行動する気力がある
  4. 誠実であり、起業家、経営チームメンバーと強い信頼関係を築ける
  5. 起業家の弱みを補佐できるコンピテンシーを保有し、起業家と一心同体の気持ちで経営を担う

U.選任してはいけない経営パートナーの資質

  1. 起業家のビジネスプランに対する理解と納得ができず、起業の成功を確信できない
  2. 起業家と協調・協働できず、自分の主義主張を押し付け、批判精神が旺盛である
  3. 起業家と協働し、起業家を補佐できるコンピテンシーを保有しない
  4. 自己中心的であり、私利私欲が大きい
  5. 無意識に経営者としての社会的地位を求める
  6. 失敗を恐れ、無意識に責任を回避し、非経営者的な仕事を求める
  7. 部下に対して尊大であり、コンサルタント・監査役・幹部社員などの批判を受け入れることができない
  8. 細かすぎて森を見ることができず、経営者として会社全体への総合的配慮ができない

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監査役の資質

  1. 真面目に、真摯な態度で事実を正しく調査し、客観的に、公正な視点から意見形成ができる
  2. 企業は小さくとも公的な存在であることを強く認識し、法令や企業倫理についての遵守を指導できる
  3. 遵法性、妥当性の視点から監査役として持ち得た意見については、使命感と勇気をもって社長・取締役に勧告・助言・提言ができる。
  4. 創業期においては社長・取締役に対してコーポレートガバナンスの教育が出来、目付役が出来る
  5. 社長との信頼関係を築き、経営のバランスが保たれるように、経営リスクをミニマイズできるように社長の相談相手になれる
  6. 創業期においては、監査もさることながらコンサルタントとして組織に入り、教育と改善の支援ができる
  7. 公正な意見を忌憚なく言うために、多額な報酬を期待しない

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コーポレートガバナンスのための社外監査役への期待

取締役の職務執行の監査を通じて、企業の健全性と透明性を確保する
 
取締役会での意思決定プロセスの健全性 (経営判断原則)を確認する
 
取締役が行う業務執行の健全性を確認する
 
代表取締役社長以下取締役との緊張感ある信頼関係を構築し忌憚のない質問、意見具申を行う
 
代表取締役社長と「良い企業統治」を実現し、「企業の価値を高める」という共通の目標のために相互に協力する
 
社会的期待を認識しコーポレートガバナンスの強化に向けて「社外の視点」を強く取り入れる
 

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コーポレートガバナンスのための監査役の役割

  • 善管注意義務をもって商法に定められた役割・責任を全うする
    • 取締役との相互信頼の精神に立つとともに適度な緊張感をもって対応し、場合によっては対立もいとわず、会社の健全な発展に貢献する。
  • 株主の付託に応える
    • 会社としての違法行為や重大な損害・事故等を未然に防止するため、タイムリーな勧告ないし助言および状況によっては行為の差し止めを行う。
  • 画一的・硬直的監査をしない
    • その会社の業種・業態・規模・経営管理体制・持株関係等を勘案し、柔軟かつ適切な監査行うとともに、親身になっての改善・指導を心掛ける。
  • 企業の健全な発展と企業価値の向上
    • 常に経営全般の立場から会社業務の実態把握に務め、事実に基づいた監査を行うとともに、ステークホルダーの立場を考えて企業価値の向上に努める。
  • 大局的立場から総合判断をする
    • 重箱の隅的問題よりも経営の本質的問題に重点をおく。
  • 予防監査につとめる
    • 不正,粉飾・債権事故等の予防を図るため、仕組・体制・取引の監査に力点をおく。
  • 適正な監査意見を形成するために、従業員の中に入って良い聞き役となる
起業家と監査役・取締役マッチングのしくみ

IAI ジャパンからの提言

IAIジャパンは起業家を支援する前提として「起業家に期待する行動規範」を設定し遵守を求めるとともに、支援するエンジェルの戒めとして「IAIジャパンのエンジェルの行動規範」を制定し遵守した活動を行っている。
 
IAIジャパンは株主や支援者などステークホルダーズの付託に応えるには、創業期からコーポレートガバナンスは必要と判断し、その視点を重視して起業家を支援するとともに、コーポレートガバナンスの要となる社外監査役の早期の選任を提言する
 
IAIジャパンには監査役経験者、弁護士、公認会計士などコーポレートガバナンスを支える専門的なエンジェルが多数在籍する。気軽に相談しエンジェルの支援を受けるとともに、早期に社外監査役の選任をおこない企業の健全な成長を実現することを提言する
 

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