創業期の企業においては、起業家とその家族・親族や知人による出資と経営が行われており、資本と経営の未分化、経営と執行の未分化により、企業としてのコーポレートガバナンスはほとんど機能していない。
しかし、ベンチャー企業がIPOを目指すならば、早期にコーポレートガバナンスが機能する体制を作るべきであり、IAIJとしてメンターグループ(顧問団)を編制して支援するにしても、個人的に監査役として企業の一員に参加するにしてもコーポレートガバナンスを強く意識した活動が必要である。
ここでは、「創業期企業の監査役の役割」としているが、監査役でなくてもIAIJのエンジェルは、以下の監査役という言葉を「IAIJのエンジェル」と読み替えて、該当する事項についてはコーポレートガバナンスが機能するように、貢献することが必要である。
T. 監査役としての基本姿勢
- 善管注意義務をもって商法に定められた役割・責任を全うする
取締役との相互信頼の精神に立つとともに適度な緊張感をもって対応し、場合によっては対立もいとわず、会社の健全な発展に貢献する。
- 株主の付託に応える
会社としての違法行為や重大な損害・事故等を未然に防止するため、タイムリーな勧告ないし助言および状況によっては行為の差し止めを行う。
- 画一的・硬直的監査をしない
その会社の業種・業態・規模・経営管理体制・持株関係等を勘案し、柔軟かつ適切な監査行うとともに、親身になっての改善・指導を心掛ける。
- 公正不偏を貫く
常に経営全般の立場から会社業務の実態把握に務め、事実に基づいた監査を行うとともに、各ステークホルダーの立場を考え、公正不偏を貫く。
- 大局的立場から総合判断をする
重箱の隅的問題よりも経営の本質的問題に重点をおく。
- 予防監査につとめる
不正,粉飾・債権事故等の予防を図るため、仕組・体制・取引の監査に力点をおく。
- 適正な監査意見を形成するために、従業員の中に入って良い聞き役となる
すべての事実は現場にあることを認識し、積極的に現場とコミュニケーションする。
これらの基本姿勢を貫くための前提は、現場現物主義に徹し、起業早期から会社の会計処理の適正性を監査し、キャッシュフローについて適切なアドバイスをすることが極めて重要である。
期末決算監査だけでなく、四半期単位程度には会社の経理状況を確認することを心がけなくてはならない。
U.法令に定める監査役の権限と義務
- 一般的な監査権限
@ | 取締投の職務の執行の監査(商法274条1項) |
A | 計算書類等の監査(商法281条2項) |
- 調査に関する権限
@ | 営業報告書・財産状況調査権 (商法274条2項) |
A | 会計監査人に対する報告請求権 (商法特例法8条2項) |
- 株主総会・取締役会等と関連する権限
@ | 株主総会への説明義務 (商法237条ノ3) |
A | 取締役会の出席義務 (商法2・60条ノ3第1項) |
B | 取締役会への報告義務 (商法260条ノ3第2項) |
C | 取締役会の招集請求権および招集権(商法260条ノ3第3項、4項) |
D | 株主総会提出議案及び書類の調査報告義務 (商法275条) |
- 監査投の地位に関する権限
@ | 監査投の任免に関する意見陳述権 (商法275条ノ3) |
A | 報酬に関する意見陳述権 (商法279条3項) |
B | 監査費用請求権 (商法279条ノ2) |
- 監督是正措置に関する権限
@ | 取締役の違法行為差止請求権 (商法275条ノ2) |
A | 各種の訴訟提起権及び手続申立権 (商法247条,280条ノ15第2項、380条
2項、381条1項、415条、428条2項、431条1項、452条1項) |
- 監査及び監査報告に関する権限
@ | 取締役から計算書類及び附属明細書を受ける権限 |
A | 監査報告書を作成する権限 |
B | 取締役から業務報告を受ける権限 |
C | 監査の方針、会社の業務・財産状況の調査方法、その他監査役の職務執行関する事項の決定をする権限 |
- その他の権限
@ | 取締役・会社間の訴訟代表権(商法275条ノ4) |
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